過去のドクターセミナーにて会員様より寄せられたご質問を解説いたします。
医療法人化を検討される際にお役立てください。
主なメリットはつぎのとおりです。
主なデメリットはつぎのとおりです。
税金面で医療法人化が有利となる大まかな目安は課税所得金額が2,000万円を超える場合と考えられます。理由は、個人開業の医師・歯科医師の先生に適用される超過累進税率は、課税所得金額が1,800万円~4,000万円までの部分については50%、4,000万円超の部分は55%が適用されます。これに対し、医療法人に適用される比例税率は平均すると概ね30%弱(社会保険診療中心の医療機関の場合)となるためです。
課税所得金額が2,000万円を超える場合、役員給与の金額設定や厚生年金への加入による社会保険料の増加など細かな内容を加味してシミュレーションを行い医療法人化の是非を判定することになります。結果として、医療法人化が有利で認可申請するとなれば、都道府県の設立受付スケジュールを調べて準備することになります。
法人化する際の費用には、設立認可申請を行政書士等に依頼した場合の支払手数料や保健所への診療所開設許可申請手数料、登記簿謄本等の取得費用、認可後の司法書士への登記手続き依頼手数料などがあります。合計で概ね80万円~100万円の費用となる場合が一般的です。なお、設立に要した費用は医療法人の税金計算で経費計上できます。
大まかなシミュレーション結果は以下のとおりです。
あくまでも概算ですが、上記の場合で概ね税金は900万円~1,000万円少なくなります。
(注:前提条件の相違により節税メリットは異なります。詳細なシミュレーションは税理士にご相談ください。)
「持分あり」医療法人の「持分」とは医療法に「定款の定めるところにより、出資額に応じた払戻し又は残余財産の分配を受ける権利」と規定されています。具体的には持分は「社員の退社時の持分払い戻し請求権」と「医療法人解散時の残余財産分配請求権」の2つを指します。従って、持分を持つとはこれらの財産権を所有していることを指します。これに対し、「持分」なし医療法人の場合は、社員等が財産権を有することはできず、医療法人が解散する際の残余財産は国等に帰属することとされています。両者の違いはこれら財産権を持てるか否かだけで、それ以外の取り扱いに差異はありません。
日常業務では厚生年金に加入した後の諸手続きが必要となります。また、税金の申告などとともに、社員総会・理事会の開催、事業報告書等の都道府県への届出、純資産の登記、2年に一度の役員(理事3人以上、監事1人以上)変更手続きなどを行うことになります。
個人時代は、事業資金も院長先生個人に帰属するお金ですので、資金繰りに支障を来さなければ自由に使うことができます。これに対し、医療法人化後の医療法人の資金は法人のものであるため、たとえ資金繰りに支障を来さない場合でも、これを個人的な支出に流用することはできません。
医療法により、医療法人には理事3人以上、監事1人以上が必要です。理事には未成年者ではない親族が就任する場合が多いと思います。監事は理事の親族や取引関係者等からは選任できないため、例えば、理事長の友人の医師や歯科医師、地域の有識者などに就任を依頼する場合があります。
医療法人だから税務調査が入る可能性が高くなるということはありません。
指導対象となる場合とならない場合があります。
できません。
社会保険診療報酬に係る収入が年間5千万円以下となった場合で概算経費特例が有利になる場合などは、税金面からは個人に戻したほうが有利となります。
損失面では、医療用機器の廃棄やカルテの法的期間の保存などに費用が生じることが考えられます。リスクとしては地域医療の質が落ちることなどが考えられます。
医療法人が解散する場合は、清算人が法人を代表して清算手続きをとります。清算人の職務は、現務の結了、債券の取立て及び債務の弁済、残余財産の引渡しとされています。清算人は就任後2月以内に3回以上債権者に対し一定期間内、債券の申出公告を官報に掲載しなければなりません。また、判明している債権者には、個別に債権の申出催告をすることになります。また、解散する際には、清算結了に至るまでの税務申告を必要となります。
「持分あり」医療法人の場合には、持分を通じて残余財産に対する権利を有していますから財産を失うことはありません。これに対し、「持分なし」医療法人は、解散時の残余財産は国等に帰属するため、個人的な財産を失う可能性はあります。そのため、解散する際には役員退職給与の金額の見込み算定などを事前に行い、精緻なプランニングと実行が求められることになります。